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楽天市場の背景(2020年1月)
インターネット通販サイトの「楽天市場」では、2020年3月18日から3,980円(税込み)以上の注文をした利用者(末端消費者)の送料を、沖縄県など一部の地域を除き、一律で無料にすると出店者側に通知しました。
これにより、出店者は送料の負担、又は販売価格の値上げを余儀なくされます。市場ニーズに合わせて薄利で運営してきた出店者は、値上げによる顧客離れは火を見るより明らかであり、楽天市場の退店の決断に迫られることになります。
【追記2020年7月】
2020年7月、楽天社における送料無料強制施策が独占禁止法被疑事件として、公正取引委員会が本格調査を開始しました。この調査開始翌日に、楽天社は送料無料強制施策は断念、公正取引委員会のペナルティ回避のために現実路線を選択した模様です。
楽天市場出店の将来性
中小の事業者が、Eコマース展開する場合、「楽天市場」「amazon」「Yahoo!ショッピング」のプラットフォームを利用することが主流です。この3大プラットフォーマーの中でも楽天市場は突出した流通総額(2018年:3兆4千億円)を誇り、中小事業者の楽天依存率も高い傾向にあります。
昨今の報道によると、楽天は出店者の意見を軽視して一方的な手数料の課金拡大や店舗側のミスに罰金を課したり、とにかく「やりたい放題」であり「イヤなら退店してかまわない」といった姿勢が明るみになりました。
集客の提供を免罪符にして弱者に犠牲を強いる横暴な運営方針は、世間に受け入れられることは難しいのではないでしょうか。
商いは、生産から消費されるまでに係わる人々の共存共栄によって成り立ちます。
楽天はこのままの体質で運営を続けていたら、いずれ“amazon”もしくは“Yahoo!ショッピング”に国内流通額を抜かれることは間違いないでしょう。その頃には出店者の撤退が撤退を呼び、消費者離れも加速して王者楽天市場の没落も想像に難くありません。
出口戦略
将来的に楽天市場及び他プラットフォーマーのモール依存率を下げ、オリジナルドメインの自社専用ECサイトで自力集客できることが課題となります。プラットフォーマーのモールに抱えている顧客を自社専用ECサイトに移行し、モールから完全撤退できることが理想です。この動きは大手メーカーも消費者と直接接点を設けるための自社ECサイトの運営が近年活発に進められています。末端顧客を抱えることは、その管理コスト以上に商品開発、ブランディング活動等、企業にとってプラス面が大きいからです。
自社ECサイト移行への注意点
3大プラットフォームのモールに依存し続けた出店者が、自社ECサイト運営に移行させる際に注意しておくべき点がいくつか存在します。
「楽天で売れていたのに自社ECサイトでは全く売れない」というミスを避けるためにも、先ずは自社ECサイトで売り易い商品なのか?を見極めて判断する必要があります。
●モールで売れている理由
売れている理由が、商品力なのか?楽天の強い集客力なのか?
楽天では、商品力の劣るアテイムでも一等地ゆえの集客力で売れてしまう場合があります。
自社ECサイトでは、ナショナルブランドのようなどこでも買えるモノほど売り難い商品といえます。逆にオリジナル商品やJANコードの付かない一品モノは売り易い商品となります。
いわゆる前者は、「価格だけで判断される商品」で、後者が「差別化できる商品」だからです。
●広告活動
自社ECサイトに検索で訪れるユーザーだけを販売対象にしていると売上は限られてしまいます。ECサイトの集客には様々な販促媒体が存在しますが、最も費用体効果が高く安全な手段は、「リスティング広告」です。google広告、Yahoo!広告を活用し、設定した予算内で閲覧者のPC、モバイル、地域、日時、検索キーワード等を指定して配信が可能です。
広告配信は入札形式で高額単価の業者が優先されるために、同一カテゴリ内に強い競合相手が存在すると採算が厳しくなる傾向にあります。
また、広告費用は1クリック最低数十円からの課金となるため、顧客販売単価が数千円の価格帯(安価)の場合は往々にして採算が取り難く、全ての商材に万能ではありません。
[2020年10月 Googleショッピングの掲載が無料化 ]
従来、googleの検索結果に表示される商品リストの掲載は有料広告のみでしたが、ついに無料掲載枠が開始されました。魅力のある商品を販売しているのに広告料との採算が合わずに苦戦しているような事業者には朗報といえます。
●カード決済のリスク
楽天市場、amazon、Yahoo!ショッピングでのカード決済における不正利用の心配は、モール側で高度なセキュリティ管理を行っているために出店者は不正リスクを意識することなく安心が担保されています。楽天の“後払い決済”で未回収となった場合でも出店者が負担することもありません。
自社ECサイトにカード決済を導入してカードの不正注文が生じた場合、「チャージバック」というしくみでECサイト運営者が金額を負担しなくてはなりません。
例えば、カード決済でオーソリがOKとなった注文でも、他人のカードを使った不正注文である場合があります。これはカード決済サービス会社がカード名義や住所・電話などの登録情報と商品注文者の情報を照合させていないために生じます。
このような運営リスクに備え、大手カード決済サービス会社「例:GMOイプシロン」ではチャージバックの保険(補償)サービスも提供されています(有料オプション)。しかし、買い物代行業者の送付先は補償対象外であったり、決済時の3Dセキュア認証が必須であったり、実運用上、使い物になりません。また、イプシロンでは、決済に使われたカード名義(カードに刻印の氏名)の提供もないため、注文者の名前すら照合できず完全な受身状態となります。
特に換金性の高い商品や小額でも需要のある商品を取り扱う場合、カードの不正利用リスクは高まり、「いつも損をするのは、ECサイト運営者である」という認識が必要です。
さらに、2019年に実施された「キャッシュレス消費者還元事業」に加盟して国の制度を受けようとすると、カード決済サービス会社が割り増しの月額費用を課金するといったケースもあります。要するに、カード決済サービス会社は普通の営利企業であるということです。加盟店(利用者)目線でサービスを期待してはいけません。
カード決済サービス会社の選定は、表面的な手数料が安いだけで判断せず、企業姿勢も含めて実運用に適した業者と契約することをおすすめいたします。
●楽天を解約するタイミング
楽天の出店料は前払いです。次回更新せずに解約する場合は、契約期間満了日の一ヶ月前(平日のみ)までに連絡(電話)が必要となります。ユーザー導線を止められないために、数ヶ月前に解約の意思表示をしたり、解約方法のマニュアルページは閲覧しないことをおすすめいたします。
●慎重な判断を!
送料無料化策によって楽天は退店するが、自社独自のECサイトで展開して行くのもハードルが高いとお考えの場合、Yahoo!ショッピングに注力するのも選択肢です。もともと出店者側の意見を尊重した運営姿勢のため、将来性が期待できます。